野末に残る遅咲きの花は・・・

野末に残る遅咲きの花は あでやかな初花よりも愛(め)ずらしく 哀しい夢のよすがともなる ひとの別れの時もまた 甘い出逢いの時より深く こころに残ることもある Цветы последние милей Роскошных первенцев полей. Они унылые мечтанья Живее пробуждают в нас. Так иногда разлуки час Живее сладкого свиданья. ペン字のお手本にあったこの詩は ロシアの国民的詩人プーシキンの詩 (金子幸彦訳)だ。 静かな晩春の薄明りに 過ぎ去った恋を偲んでいる。 そんなあまくせつない情景が ぼうっと浮かぶ。 のちにロシア語を学習することになって ふと思い出しネットで検索しようとしたが この詩にはタイトルが無いことから 原詩を探すのはなかなか苦労した。 (結局グーグル翻訳で直前の詩『バッカスの歌』を 訳して検索にかけ、なんとかたどり着いた) 数多い作品の中からこの詩が選ばれたことといい ネットで検索しても見つけづらいことといい まるでひっそり茂みに佇んでいる遅咲きの花を 見い出すこの詩の情景と重なる部分があって面白い。 しかしこの翻訳もまた素晴らしいよね。 詩の翻訳って翻訳者自身に 詩心がないと難しいだろうな。 私は原詩を味わうレベルにないので どれだけ詩人の心が再現されているのか わからないけど。 訳すことによってこの世に 新たな詩が誕生することになるのだからねえ。 それにしても図書館で借りた詩集に 経年劣化はあったものの 人がふれた形跡がほとんどなかった。 図書館の保存庫で、長い間 眠っていたのだろう。 (私の年齢とほぼ同じくらい!) まあね。 通勤時間の中央線で 古いロシアの詩を読む人なんて、 あまりいないよね。